寄託者 各位
日本冷蔵倉庫協会発第53号
平成27年8月17日
一般社団法人 日本冷蔵倉庫協会
業務委員会 委員長 西願 廣行

冷蔵倉庫に於ける保管温度等と品温荷役作業とダメージ品等に対する冷蔵倉庫の実態と責任範囲について、日本冷蔵倉庫協会としての見解をまとめましたのでご報告いたします。
文書・資料1・資料2(PDF)

[Ⅰ] 保管温度等と品温について

1.保管温度と品温
  1. 保管温度とは保管庫の室温であり、倉庫業法に定める保管温度帯とは保管庫の温度維持設定範囲のことです。(冷却器デフロスト(霜取り)及び蓄熱冷却運転中の温度変動は除く)
  2. 保管品の品温が室温と同等になるにはタイムラグがあり、入庫品の品質と入庫時の品温と数量にもよりますが、数時間で室温と同等になることは困難です。
  3. 室温を狭い範囲でコントロールするには、寄託当事者間で事前協議が必要ですが、室温を一定に維持することは困難です。
  4. 保管庫内は空間的・時間的に温度むらがあります。
  5. 品温を保管温度帯内に維持できても、保管中に品質が変化する場合があります。(保管品毎に適性保管期間があり、また入庫時の品温によっても品質変化が起こり得ます)
2.荷捌場の室温及び荷捌作業時間と品温
  1. 荷捌場の温度維持設定範囲および作業時間に関して倉庫業法上では規定がありません。
  2. 荷捌場の室温と作業時間については、各事業所の事情により異なります。
  3. 荷捌場の室温(雰囲気温度)と品温の関係につきましては品温実験結果を 別紙資料1 にまとめています。
3.品温と品質
  1. 営業冷蔵倉庫業者は保管品毎の品温と品質の関係に関する知見がないので、保管温度帯については寄託者より営業冷蔵倉庫業者へご指示またはお申し出を願います
  2. 営業冷蔵倉庫業者は保管品を開梱して内容の検温等の検査はせず、積み付け外観や外装のみ検品しています。
4.放射温度計(非接触型温度計)
  1. 入出庫時等の検温を放射温度計で計測される場合には、その温度計の測定環境、放射率の設定、有効な計測範囲内でのご使用等適切な計測が求められます。( 別紙資料2
  2. 放射温度計による測定結果は、適切に計測がなされたことの確認がされない限り、正しいものとは認められません。

[Ⅱ] 荷役作業とダメージ品の扱い

1.ダメージ品発生の原因
  1. 冷蔵倉庫に限らず取扱作業中の不注意、不慣れ等による人為的なもの
  2. 輸送、移動、保管中の環境温度、振動、衝撃、過重によるもの(人為的、不可抗力両方あり)
  3. 外装の規格、素材、強度、梱包方法等によるもの
  4. 内容物の物理的、化学的変化によるもの
  5. 上記(1)~(4)の複合によるもの
2.冷蔵倉庫業者のダメージ品への対応
1)発見した場合
  1. 寄託者に連絡の上ご指示を仰ぎます。
  2. ご指示が頂けない場合は別扱いとします。
  3. 寄託者と事前の取り決めがある場合には、それに従います。
2)ダメージ品の処理、処分について
  1. 冷蔵倉庫で溶解、乱箱等が発見された場合に、冷蔵倉庫で発生したと見なされがちですが、発見時には関係者全員が誠意を持って原因究明する義務と責任があります。
  2. 倉庫側が弁償した場合は、所有権は倉庫側に移転します。(寄託約款甲45条・乙41条)
  3. 前項により所有権が移転した商品の処分について制限を設けることは出来ません。(転売禁止等)
  4. バンド掛けに起因するダメージに対しては免責とさせていただきます。
  5. 外箱のみのダメージに伴う損害賠償は、外箱代金と入替経費のみとなります

[Ⅲ] 臭気について(移り香、吸着等)

  1. 倉庫臭が移る場合冷蔵倉庫にはそれぞれ特有の冷蔵倉庫臭がありますので、事前に商品特性等に関して協議が必要です。
  2. 商品間で移る場合入庫時に、お客様よりその商品の特性についての書面による申告が必要です。(臭いを出すもの、吸収するもの両方)
  3. 香りが減少する場合冷蔵倉庫は空気の対流により冷却していますので、商品の香りを長期的に維持することは困難です。入庫前に二重包装等梱包の工夫が必要となります。

[Ⅳ] 営業冷蔵倉庫業者の責任範囲

  1. 保管庫の室温を適正に維持していた場合、品質につきましては[Ⅰ]により責任を負うことはできません。
  2. 故意または重大な過失による損害ある場合には寄託約款に従い対処させて頂きます。(寄託約款甲40条・乙37条)
  3. 寄託約款の規定により、損害の挙証責任は寄託者にあります。(寄託約款甲40条・乙37条)
  4. ダメージ品および入出庫時検温結果による受け取り拒否について
    受け取り拒否の合理的な基準がある場合には、関係者全てに周知徹底願います。基準がない場合や周知がない場合には、他の寄託者に影響を及ぼす懸念がない限り、冷蔵倉庫の判断で別管理とし、入庫貨物の受け取り拒否は致しません。(寄託約款甲・乙7条)
  5. 臭気について[Ⅲ]-1の事前協議がない場合は、臭気が原因で発生する損失に対する責任を負いません。

[Ⅴ] お願い

「放射温度計」による商品外箱の温度計測結果を商品受入時の判断基準とすることは、食品ロス及び物流ロス削減の観点からもご再考をお願いします。